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国際協力NGOの役割と国内活動

NGOが元気だから地域も元気

 日本はグローバル化の進展、地球レベルの環境問題の深刻化、少子高齢社会の到来、人々の価値観の多様化などに直面し、地域で取り組む問題が複雑化している。さらに地域、家族での絆が希薄し、個人が抱える問題が顕在化し、地域住民が支えあって解決するコミュニティーづくりが重要視されている。こうした社会問題の質の変化、行政の財政悪化に対応するため、問題解決を地域で市民が主体的に担っていくことが求められている。

 愛知県は平成16年に「あいち協働ルールブック2004」を発行した。NPOや市民が協働や連携によって地域の問題を解決する新しい公共の担い手として期待されている。

 平成10年に特定非営利活動促進法(NPO法)が成立して以降、平成28年4月時点で、愛知県1919、岐阜県771、三重県703のNPO法人が設立されてきた。任意団体まで含めると、その数倍の活動主体がある。これらの数字からNPOの将来の新たな活動の展開を予測することができる。

 次に、国内向けのNPOだけでなく、開発途上国の社会問題を解決する国際協力NGOに目を向ける。平成26年における外務省の調査において、日本の国際協力NGOのうち59%が、多様なリソースを求めて、その拠点を東京に集中して立地している。地方で国際協力NGOの立地数が少ないか、活動量が少ないように見える。そして、会員数、年間収入額は東京に拠点を置く国際協力NGOの方が地方の国際協力NGOを圧倒する。

 しかし、地方に軸足を置くNGOが有用な活動を十分実施できないかというと、そうでもないらしいことが分かってきた。

 地方のNGOの中には、地方に存在することによって東京にはない強みを持つものがある。地方のNGOの活動には財源、人材など種々の困難があるが、個性や強みを伸ばす活動をしてきた。

 その一つが海外の活動の経験やノウハウが日本のまちづくりに生かされるということである。国際協力活動と日本国内の地域づくりの活動において、分野が共通していたり、活用する解決方法が近似していたりする。国際協力NGOが国内での活動のポテンシャルを有している。

 また、意識的に海外と国内の地域を交流させるユニークな活動に取り組む団体も少なからず存在するようになった。高山市を本拠とする(特活)ムラのミライでは「ムラの知恵を掘り起こし、未来の世界へつなげよう」を合言葉に、海外と日本で地域コミュニティーを主役としたユニークなプロジェクトを作り出している。

 それらは日本から開発途上国への一方的な支援の提供でなく、また単に国内でサポーター増加の促進でもなく、相互の学びのある双方向の活動といえる。NGOをはじめとする市民参加の仕組みが外向けの国際協力の分野だけでなく、国内の地域社会と連携を深め、地域社会を活性化している。元気なNGO活動が地域をより活性化させるのである。

後藤 順久 経済学部教授

※この原稿は、中部経済新聞オピニオン「オープンカレッジ」(2016年6月16日)欄に掲載されたものです。学校法人日本福祉大学学園広報室が一部加筆・訂正のうえ、掲載しています。このサイトに掲載のイラスト・写真・文章の無断転載を禁じます。

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