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パラリンピアンの力 共生社会に向けてできること

日本福祉大学・日本財団パラリンピックサポートセンター共催シンポジウム
「パラリンピックと共生社会」
第2部 講演「パラリンピアンの力 共生社会に向けてできること」

講師:
大日方 邦子 氏(一般社団法人日本パラリンピアンズ協会 副会長)
日時:
2017年5月27日(土)

※所属や肩書は講演当時のものです。

1.共生社会とは

 私は、共生社会を考える上で有効なのは、アスリートがトップアスリートとして活躍し、活躍した後に何ができるのかを考えることではないかと思っています。国は、共生社会とは、あらゆる人が安全に安心して暮らせる社会と定義していますが、私自身にとっての共生社会は、自分が車椅子で生活していることをいちいち気にしなくてもいい社会です。

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大日方邦子氏

  かつて、私は車椅子でまちを歩くと、多くの人にもの珍しそうに見られるに違いないと思い込んでいました。しかし、1998年の長野パラリンピックをきっかけに、周りも自分も変わり、日常生活でも車椅子を使うようになりました。義足では長い距離を歩くことができませんが、車椅子を使うことで行動範囲が広がり、世界が広がりました。これは長野パラリンピックのレガシーだと思っています。

2.パラリンピアンに秘められた力

 国際パラリンピック委員会は、パラリンピアンに秘められた力こそがパラリンピックの象徴であるとし、四つの価値を重視しています。勇気(マイナスの感情に向き合い、乗り越えようとする強い精神力)、強い意思(困難があっても諦めず限界を突破しようとする力)、インスピレーション(人々の心を揺さぶり、駆り立てる力)、そして公平(多様性を認め、創意工夫すれば誰もが同じスタートラインに立てることを気づかせる力)です。障がいのある人は弱くてかわいそうな人だという思い込みがあるとすれば、パラリンピアンには自身の取り組みを通してそれを変えるきっかけをつくる力があります。

3.パラリンピアンとして何が示せるか

 さらに、パラリンピアンである以前にアスリートとして、国際オリンピック委員会がオリンピックの価値として掲げている尊重・卓越性・友愛の三つの精神は、オリンピアンだけではなく、パラリンピアンも有しているものです。

 そして、自己肯定感を持つことの大切さと、できないと思い込んでいることの中には努力や工夫、テクノロジー、周囲の人の理解があればできることがたくさんあるということを自分の経験を通じて伝えることもできます。私たちの周りには社会が生み出すさまざまな障壁がありますが、実は見方を変えるとあっさり解決できることもあります。そういう視点にパラダイムシフトするというメッセージを伝えられるのが、パラリンピアンではないかと思います。

 障がいを前向きに受け止め、自分の限界を突き抜けてきたパラリンピアンたちのパフォーマンスが、明るく強いメッセージとして多くの人々の心に届くことを願ってやみません。

一般社団法人日本パラリンピアンズ協会 副会長

大日方 邦子

東京都出身。3歳の時、交通事故で右足切断、左足に障害。高校2年からチェアスキーをはじめ、アルペン日本代表として1994年リレハンメルから2010年バンクーバーまで5大会連続出場。金2、銀3、銅5個のメダルを獲得。日本パラリンピアンズ協会副会長などを務める。

※この講演録は、学校法人日本福祉大学学園広報室が講演内容をもとに、要約、加筆・訂正のうえ、掲載しています。 このサイトに掲載のイラスト・写真・文章の無断転載を禁じます。

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