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日本ブラインドサッカー協会が目指す社会的価値の創造とその戦略

日本福祉大学・日本財団パラリンピックサポートセンター共催シンポジウム
「パラリンピックと共生社会」
第2部 講演「日本ブラインドサッカー協会が目指す社会的価値の創造とその戦略」

講師:
松崎 英吾 氏(特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会 事務局長)
日時:
2017年5月27日(土)

※所属や肩書は講演当時のものです。

1.障がい者に対するスティグマ

 世の中には、残念ですが障がいに対して偏見や負の烙印(スティグマ)を押したような固定概念を持っている人がまだたくさんいます。頭で分かっていることと、実際に声を掛けてあげられることの間には大きな溝がありますが、私はその溝を埋めるのに障がい者スポーツが役に立つのではないかと思って活動しています。

 スポーツなら、目が見えないのにサッカーなどできるはずがない、というスティグマを利用して、注意を喚起することができます。私たちは「スポ育」と名付けたブラインドサッカーの体験学習を年間約500件行っています。ある小学校では、ブラインドサッカー日本代表の選手から、5年生が目隠しをしない状態で10秒間でボールを奪いに行くというチャレンジをしました。子どもたちはボールなんて簡単に奪えると最初は思うのですが、実際はほとんど取れません。

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松崎 英吾氏

 選手たちはブラインドサッカーでは子どもたちに負けませんが、初めて行った学校では一人でトイレには行けないし、給食を食べるときにもみんなのサポートが必要です。子どもたちは、こうした体験を通して、できないことや手助けが必要なこともある一方で、できることも得意なこともあるのだということを学んでいきます。

2.共生社会に向けて

 10年前にこの活動を始めた頃、ある小学校の先生から、「ブラインドサッカーを体験しても教育には何の意味もない」とか、企業に協賛をお願いして回ったときに、「ブラインドサッカーだけを特別扱いする必要はない」と言われたりしました。そうした厳しい意見を頂いて、障がい者スポーツやブラインドサッカーの価値が伝わっていないのは、自分たちの側に問題があると気付きました。応援してほしいとウォンツばかり言っていて、ブラインドサッカーが社会の役に立つということを全く伝えられていなかったのです。

 そこで、私たちは目線を切り替えて、先ほどお話しした「スポ育」と名付けた子ども達に目が見えない状態を選手と一緒に体験してもらうプログラムを作成しました。企業向けにはコミュニケーションプログラムを作成しました。そして小学校の先生方にはダイバーシティを浸透させていく「教育プログラム」として、企業にはダイバーシティ豊かな社会を一緒に築いて行くための「研修プログラム」として提供し、ブラインドサッカーを活用してくださいと言うようになりました。

3.おわりに

 私たちは皆、必ず年老いて体の機能が低下していきます。そのときに、孫や子どもたちの世代からどのように私たち自身が扱われたいか。そのために、今アクションを取る必要があります。誰かを助けるためだけではなく、将来の自分のために障がい者と触れ合い、障がい者スポーツを応援していただければいいのではないかと思います。

特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会 事務局長

松崎 英吾

1979年千葉県生まれ。大学在学時に運命的に出会ったブラインドサッカーに衝撃を受け、関わるようになり、2007年に日本視覚障害者サッカー協会(現・日本ブラインドサッカー協会)の事務局長に就任。「サッカーで混ざる」をビジョンに掲げ、サスティナビリティがありながら事業型で非営利という新しい形のスポーツ組織を目指す。

※この講演録は、学校法人日本福祉大学学園広報室が講演内容をもとに、要約、加筆・訂正のうえ、掲載しています。 このサイトに掲載のイラスト・写真・文章の無断転載を禁じます。

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