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パラリンピック教育

共生社会の実現へ継続的な学びを

今年はオリンピック・パラリンピック競技大会(以下、オリ・パラ)が行われる年。場所はパリを中心としたフランスの広範囲で競技が実施される。パリ大会の前は東京大会であったが、新型コロナウイルス感染拡大により1年延期となり、基本的に無観戦での開催となったことは記憶に新しい。

パリ大会のスローガンは「Games Wide Open(広く開かれた大会)」で、その実現のため、セレブレーション、レガシー、エンゲージメントの三つの柱を立てている。二つ目のレガシーは、東京大会同様に環境問題に配慮した持続可能な大会を目指していることや、オリ・パラ選手が一つの選手団を結成し、同じ大会エンブレムを使用することなどが挙げられている。

近年、オリ・パラ開催地では教育プログラムが実施されている。東京大会でも東京2020教育プログラム「ようい、ドン!」が行われ、オリ・パラを通じたスポーツの価値、多様性に関する理解(障害者理解・国際理解)、主体的・積極的な参画プログラムなどが全国的に推進された。これにより児童・生徒の心に、自信と勇気、多様性の理解、主体的・積極的な社会参画というレガシーを残すことができたとある。特にパラリンピック教育では子どもたちが学んだことを周囲の大人に伝える「リバースエデュケーション」効果が期待され共生社会を育む契機となったと報告されている。

日本福祉大学がある愛知県美浜町では「美浜町パラリンピック教育」が2018年から現在も継続的に実施されている。大学と教育委員会が連携し、毎年町内の小学4年生と中学1年生が座学と実技でパラリンピックについて学ぶ。その教材には国際パラリンピック委員会公認教材「アイムポッシブル」を活用している。これは東京大会の教育プログラムでも使用されており、「パラスポーツを通じインクルーシブな世界を作る」力を育むことができるように開発されたものだ。インターネットから無償で誰でも利用できる教材で教育機関でも広く使われている。現在は東京大会の情報も含まれた内容に修正され、子どもたちにもイメージしやすいようにアニメーション教材が追加されている。パリ大会に合わせてこの教材を活用してはどうか。

パラリンピック教育は、パラスポーツを題材に障害の理解促進や共生社会の実現に向けた「気づき、考え、実行する」力を育むことができる。またパラスポーツを体験して誰でも楽しめるスポーツだと理解でき、用具やルールの工夫から「どうしたらできるのか」考える力につながる。さまざまな学びがあるパラリンピック教育は、オリ・パラと同じ4年に1度ではなく継続的に学ぶことが重要ではないか。

2026年には愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会が実施される。この大会を契機として社会が変わり未来につながるレガシーを残せることを期待したい。この地域がインクルーシブな世界に近づけるよう、今後もパラリンピック教育を推進していく。

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スポーツ科学部 安藤 佳代子 准教授

安藤 佳代子 スポーツ科学部准教授

※この原稿は、中部経済新聞オピニオン「オープンカレッジ」(2024年6月5日)欄に掲載されたものです。学校法人日本福祉大学学園広報室が一部加筆・訂正のうえ、掲載しています。このサイトに掲載のイラスト・写真・文章の無断転載を禁じます。

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