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途上国の教育支援

カンボジアの子どもと共に学び、成長する

途上国への教育支援は、校舎や教室などのハード面の支援で一定の成果を上げた。今後は教育の中身・質を改善していくことが重要であり、持続可能な開発目標(SDGs)においても、「質の高い教育をみんなに」という目標が設定されている。ただし、これは発展途上国のみならず先進国にも共通の課題である。本稿では、学部で取り組むカンボジアの小学校教育支援プロジェクトと、そこでの日本の高校生・大学生の活動を例に、途上国との学び合いを通じた教育の質の向上を考える。

カンボジアの教育は、ポル・ポト政権下での知識人の虐殺の影響がいまだに残り、教員不足、初等中等教育修了率の低さ、高い留年率など、多くの問題を抱えている。こうした中、学習者中心の教育の実現や情報通信技術(ICT)の活用など、世界的な潮流も踏まえた教育改革が目指されている。

日本では、約20年前、PCとプロジェクターの普通教室への整備が進められ、現在ではGIGAスクール構想により1人1台環境での学びが推進されている。この間、機器の操作方法の指導のみに陥らないよう、教育効果を向上させるための活用方法や授業構成が検討されてきた。こうした知見も踏まえ、現地の教員養成校や小学校教員と連携したデジタル教材の作成、指導案の検討、授業実践を行っている。ただし、カンボジアでは、建物などは整備されたとはいえ、教育機器はほとんど整備されておらず、時には、企業などからの協力を得て、授業実践のための最低限の環境を寄贈するといった対応も行っている。

教育設備面の課題が残る中ではあるが、教育の中身・質の向上のために、日本の高校生や大学生にもできることはある。実際、学部が取り組むプロジェクトでは、現地教科書をもとに、高校生や大学生が英語でのビジュアルなスライドを作成し、現地教員が確認・修正しながら現地語化するという形で協力・連携して進めている。こうして制作された教材を活用して子ども達が学ぶ様子を、現地の教員はビデオで撮影して報告してくれる。制作に携わった学生らは達成感を味わうとともに、取り組みをより良くするための意欲を高めている。こうしたオンラインでの持続的で、相手の顔が見える取り組みを踏まえ、現地小学校を訪問する機会を得た際には、学生たちの活動はより充実したものになる。現地とのやり取りを通じて自信や問題解決能力が向上し、OECDの調査などで日本の高校生が低いとされる自己効力感を高めていくことも可能性であろう。

教育支援は、単なる支援活動を超え、支援者と現地の人々が互いに学び合う貴重な機会と捉えることができる。日本の抱える教育課題の解決にもつながりうるものであり、今後も、一方向での支援にとどまらない協働学習・交流学習に取り組んでいきたい。

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国際学部 佐藤慎一教授

※この原稿は、中部経済新聞オピニオン「オープンカレッジ」(2024年7月2日)欄に掲載されたものです。学校法人日本福祉大学学園広報室が一部加筆・訂正のうえ、掲載しています。このサイトに掲載のイラスト・写真・文章の無断転載を禁じます。

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